料理人の教科書

やり方包丁と切り方

包丁の研ぎ方

時間40分難しさふつう

  • ふだんの研ぎ直しは、#1000前後の中砥石1本でできる。荒い砥石や仕上げ砥石は、必要になってから足せばよい
  • 刃を砥石から15度くらい浮かせ、その角度を最後まで変えずに研ぐ。数字の正しさより、ぶれないことのほうが大事
  • 研ぎ終わりの合図は回数ではなく「返り」。反対側の刃先に、切っ先から刃元まで返りが出たら、その面は研げている
道具
中砥石(#1000前後)、仕上げ砥石(#3000〜5000。なくてもよい)、砥石台か濡らしたふきん、水を張ったバット、新聞紙、乾いた布

用意するもの

  • 中砥石(#1000前後):切れ味をもどす、いちばん大事な1本。荒いほうから荒砥石(#200〜400くらい)・中砥石・仕上げ砥石(#3000〜5000くらい)の3種類があり、数字が大きいほど目が細かい
  • 荒砥石:刃が欠けたとき、形がくずれたときだけ使う。ふだんは使わない
  • 仕上げ砥石:中砥石のあとに刃先をなめらかにする。切れ味が長もちする。なくても刃はつく
  • 砥石台か、濡らしてたたんだふきん:砥石をのせて動かないようにする。動く砥石は危ない
  • 水を張ったバット:砥石を浸すため。研いでいる途中に水を足すのにも使う
  • 新聞紙:返りを取るのと、試し切りに使う
  • 乾いた布:研いだあと、包丁の水気をふく

手順

  1. 砥石を水に浸す。水を吸うタイプの砥石は、泡が出なくなるまで沈めておく(目安10〜20分)。水をかけるだけで使うタイプは浸さない。長く浸すと傷むものがあるので、箱の説明に従う
    水を吸う砥石は、泡が出なくなるまで沈めておく
    水を吸う砥石は、泡が出なくなるまで沈めておく
  2. 砥石台か濡らしたふきんの上に、砥石を縦長に置く。手で押して動かないことを確かめる。面がへこんでいたら、先に面直しをする(砥石の手入れと面直し)
    砥石は濡らしたふきんの上に縦長に置き、押して動かないか確かめる
    砥石は濡らしたふきんの上に縦長に置き、押して動かないか確かめる
  3. 包丁を持つ。利き手の人差し指を峰(刃の背)にのせ、親指を刃元の近くに添える。刃先を自分のほうに向け、上から見て砥石に対して斜め45度くらいに置く
    上から見た置き方。刃先を自分に向け、砥石に対して45度くらいに置く
    上から見た置き方。刃先を自分に向け、砥石に対して45度くらいに置く
  4. 峰を持ち上げて、刃と砥石のすき間を15度くらいにする。目安は、峰の下に小指が少し入るくらい
    横から見た角度。刃と砥石のすき間は15度くらい。峰の下に小指が少し入るくらい
    横から見た角度。刃と砥石のすき間は15度くらい。峰の下に小指が少し入るくらい
  5. 反対の手の人差し指と中指を、研ぎたい所の刃の上にそっと置く。指で押さえた所がいちばんよく研げる
    研ぐときの手元
    研ぐときの手元
  6. 角度を変えずに、前後に動かす。向こうへ押すときに少しだけ力を入れ、手前に引くときは力を抜く。強い力はいらない
  7. 刃を先・中ほど・元の3つに分けて、押さえる指をずらしながら全体を研ぐ。切っ先は柄を少し上げ、刃元は柄を少し下げると、刃の丸みに沿って当たる
    切っ先を研ぐところ。押さえる指を切っ先のほうへずらし、柄を少し上げる
    切っ先を研ぐところ。押さえる指を切っ先のほうへずらし、柄を少し上げる
  8. 研いでいると砥石の上に黒っぽい研ぎ汁が出る。これは流さずにそのまま使う。砥石の表面が乾いてきたら、水を少し足す
    研ぎ汁。黒っぽい泥のような水は流さずに使う
    研ぎ汁。黒っぽい泥のような水は流さずに使う
  9. 返りを指で触って確かめる。研いでいる面の反対側の面に親指の腹を当て、峰側から刃先へ向けて、刃と直角にそっとすべらせる。刃先を越えるときに、髪の毛1本くらいのざらっとした引っかかりがあれば、返りが出ている。切っ先・中ほど・元の何か所かで確かめ、全体に出るまで研ぐ
    返りが出た刃先をとても大きくしたところ。研いだ面の反対側に、細い金属のめくれがある
    返りが出た刃先をとても大きくしたところ。研いだ面の反対側に、細い金属のめくれがある
    返りの確かめ方。親指の腹を峰側から刃先へ、刃と直角にそっとすべらせ、刃先で引っかかるかを指で感じる
    返りの確かめ方。親指の腹を峰側から刃先へ、刃と直角にそっとすべらせ、刃先で引っかかるかを指で感じる
  10. 包丁を持ちかえて裏返し、反対の面を同じ角度で研ぐ。今度は最初の面の側に返りが出るまで研ぐ
    裏返して反対の面を研ぐ。柄を反対の手に持ちかえ、刃先は手前のまま
    裏返して反対の面を研ぐ。柄を反対の手に持ちかえ、刃先は手前のまま
  11. 仕上げ砥石を使うときは、中砥石の研ぎ汁を包丁と手からよく洗い流してから、同じ角度で、もっと軽い力で両面を研ぐ。残った粗い粒が、細かく整えた刃に傷をつけるからだ
    仕上げ砥石で研ぐ。中砥石より目が細かく、もっと軽い力で研ぐ
    仕上げ砥石で研ぐ。中砥石より目が細かく、もっと軽い力で研ぐ
  12. 返りを取る。新聞紙を平らに置き、刃先を軽くすべらせて両面をこする。こすりすぎると刃先が丸くなるので、返りが取れたらやめる。砥石で取るときは、ごく軽くなでるだけにする
    返りを取る。紙の上で刃先を軽くすべらせる
    返りを取る。紙の上で刃先を軽くすべらせる
  13. 片刃の包丁(出刃・柳刃・薄刃など、片面だけに刃がついた和包丁)は研ぎ方が少しちがう。表は、刃の斜めの面(切刃)を砥石にぴったりつけて研ぎ、切刃と平らな部分の境目の線(しのぎ筋)をくずさない。しのぎ筋は一度くずれると元にもどすのがとてもむずかしい。裏は角度をつけずに砥石に平らに当て、軽く数回すべらせて返りを取るだけにする。裏を研ぎすぎると形がくずれる
    片刃の和包丁の表。刃に沿った広い斜めの面が切刃で、その上の境目の線がしのぎ筋
    片刃の和包丁の表。刃に沿った広い斜めの面が切刃で、その上の境目の線がしのぎ筋
  14. 包丁を中性洗剤で洗い、研ぎ汁と細かい鉄の粉を落とす。乾いた布で水気をふく。店では、ふだんの包丁と同じように殺菌してからしまう
    水気をふく。布は峰側からはさみ、刃元から切っ先へ動かす
    水気をふく。布は峰側からはさみ、刃元から切っ先へ動かす
  15. 砥石を洗い、日かげで乾かす(くわしくは 砥石の手入れと面直し)

なぜそうなるのか

  • 包丁が切れなくなるのは、使ううちに刃先がすり減って丸くなるから。研ぐとは、刃先のまわりを少しずつ削って、細くとがった先をもう一度作ることだ
  • 刃先までちゃんと削れると、行き場のなくなった薄い金属が反対側にめくれる。これが返り。返りが出たということは、刃先の一番はしまで砥石が届いたしるしになる。だから回数ではなく返りで決める
  • 角度がぶれると、そのたびにちがう面ができて、刃先が丸くなる。角度を少し大きくすると早く返りが出るが、刃が厚くなって切れ味が長もちしない
  • 研ぎ汁には、砥石からはがれた細かい粒が入っている。この粒が紙やすりの粒のように働くので、流さずに使うとよく研げる

よくある失敗

  • 切れないからと角度を立てる → 刃先だけが削れて、厚くて鈍い刃になる → 角度を15度くらいにもどし、刃先から少し上まで、研いだ跡(研ぎ幅)が広がるように研ぎ直す
  • 回数だけ数えて、返りを確かめない → 刃先まで研げていない所が残り、そこだけ切れない → 指で返りを確かめ、出ていない所を指で押さえて研ぐ
  • 刃の真ん中ばかり研ぐ → 切っ先や刃元が研げず、刃の形がゆがむ → 先・中ほど・元に分けて、まんべんなく研ぐ
  • 力を入れて速く動かす → 角度がぶれ、手元が危ない → ゆっくり、軽い力で、同じリズムで動かす
  • へこんだ砥石で研ぐ → 刃が砥石に当たったり当たらなかったりして、形がくずれる → 研ぐ前に毎回面直しをする
  • 返りを取らずに使う → 最初は切れても、めくれた金属がすぐ折れて切れ味が落ちる → 新聞紙で両面をこすって取ってから使う
  • 研いだあと洗わずにしまう → 研ぎ汁の鉄の粉が残り、さびの原因になる → 洗って、すぐに水気をふく

安全の注意

  • 砥石は砥石台か濡れたふきんの上に置き、動かないようにしてから研ぐ。研いでいる最中に砥石がずれると、手が刃の上にすべる
  • 力を入れすぎない。力むと手元がぶれて、刃で指を切りやすくなる
  • 刃を押さえる指の腹が、砥石にこすれて擦り傷になることがある。指は刃の上にそっと置き、砥石の面に指先がつかないようにする
  • 返りを確かめるときは、刃先にそって指を動かさない。指は峰側から刃先へ、刃と直角にそっと当てる
  • 包丁を洗うときは、スポンジを二つ折りにして峰側からはさみ、刃先のほうへ動かす。刃のほうからはさむと指を切る
  • 刃物を持っているあいだは、刃から目を離さない。研ぎ終わったら、包丁をすぐに片づける。研ぎ汁で濁ったシンクや水の中に、包丁を沈めておかない(見えない刃で手を切る)
  • 包丁が手からすべり落ちたら、つかもうとしない。下がって、落ちてから拾う
  • 塩素系の漂白剤は包丁をさびさせる。包丁の消毒は、熱いお湯(80℃で5分以上)か、店で決めた方法で行う

プロの目安

  • 新聞紙を1枚持ち上げ、刃を軽く引いて切る。どこでも引っかからずにすっと切れれば研げている。引っかかる所は研ぎ残しなので、その場所をもう一度研ぐ
  • 刃先を爪の上に軽くのせる。つるっとすべる所は、まだ切れていない
  • 切れ味が落ちたサイン:トマトの皮がすべってつぶれる、ねぎが切れずにつながる、紙がすっと切れない。このどれかが出たら研ぎどき
  • 研ぐ回数の目安は、家庭なら月に1〜2回。毎日たくさん切る厨房では、それより短い間隔で、切れ味が落ちたと感じたその日の仕事終わりに軽く研いでおくことが多い推測
  • 研いだあとの刃先を明るい所で見て、切っ先から刃元まで研いだ跡(研ぎ幅)が同じ幅でそろっていれば、角度がぶれずに研げている推測

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